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メディキュアレポート Vol.1

女性視点からのスタート、土井先生の乳がん治療を“支える”想い(前編)

2020年2月26日

女性視点からのスタート、土井先生の乳がん治療を“支える”想い(前編)

長年、女性の視点で乳がん治療に携わってこられ、湘南記念病院 乳がんセンターにて「支える治療」を実践されている、センター長の土井卓子先生にお話をお聞きしました。

患者さんがワクワクできるための取り組みが最大のケア

土井先生とグンゼのメディキュアチームとの出会いは約4年前。まだメディキュア製品が誕生していなかった頃になります。その当時、すでに先生は乳腺外科医として注目される存在で、乳がん患者様の身体的にはもちろん、メンタルのケアのためにも、術後ケアの下着が日本では存在しない頃からその重要性を訴え、行動に移してこられました。

例えば約30年前、世界でも有数のガンの臨床研究を行うアメリカのメモリアル・スローン・ケタリングセンターを見学された先生は、そこで見た前開きで簡単に着脱できる、乳がん術後の人のためにつくられた下着に出会い感動し“これを日本の患者さんにも使ってもらえるようにしたい”と、帰国後すぐにこれを見本にした術後用下着の製作をメーカーに依頼。また、授乳用のブラジャーが放射線治療で起きる皮膚障害時に使用できると思うと、早速そのメーカーに乳がん患者様用のブラジャーの製作を依頼するなど、なんとか患者様の負担を軽くしたいと、様々な会社に試作をお願いしたり、開発のアドバイスをされてきました。

そんな先生の長きに渡る活動もあり、乳がん患者様用の下着を製造販売するメーカーも増えてきました。そこで、患者様の “何をどう選んでいいかわからない”、“いろんな下着を見てみたい”という要望へのひとつの答えとして2019年、乳がんセンターの一角に治療で通院されている患者様のための“ケアルーム”が開設されました。ここでは乳がん治療に必要な各メーカーの下着やケア製品が展示されており、患者様が自由に手に取ることができます。また看護師とともに自身の症状に合わせた下着を選び、試着することもできます。販売はされていませんが、お気に入りの下着が見つかり、購入したいという患者様にはお店の案内を手渡してくれます。

土井先生:ほんの小さなスペースでもいい、患者さんのためのこのような取り組みが乳がん治療を行う病院で少しでも広がって欲しいなと願っています。いまでこそ、きれいな色の術後用下着を選べるようにもなりましたが、乳がんだからといって、高額なのにおしゃれでない色味の下着しか選択できないという時代もありました。それでも手術、抗がん剤治療や放射線治療で気持ちが凹むことが多い患者さん達が、デパートでショッピングを楽しむように、ワクワクしながら下着やケア製品を選べる場所をつくりたかったのです。せっかくきれいでカラフルな下着を見てもらうのですから、ハンガーを少しおしゃれなものにしたり、壁にウォールステッカーを貼ったり、下着を販売されているグンゼさんにもディスプレイの方法などのアドバイスをいただきながら、患者さんがウキウキできるちょっとした工夫をすることで、覗いてみたくなる場所になるよう心がけました。いまやガンは通院しながら治す病気です。だからこそ、ワクワク、ウキウキできる場所が必要だと考えています。

乳がんセンターの一角に治療で通院されている患者様のための“ケアルーム”が開設

通院での抗がん剤投与、放射線治療が主流のいま、暮らしながら治療を続けるためのケアとは

メディキュア:先生が乳腺外科の専門医になられたのはどういうきっかけだったのですか。

土井先生:はい、もともと私は小児科の医師を目指していましたが、乳腺外科医になったのは、研修医として入った外科で乳がんの治療をされている患者さんの相談にのるようになったことがきっかけです。当時、外科のオペといえば、胃がん、大腸がんがほとんどで、大学病院でも乳がん手術を受ける人は年間20人いるかいないほどでした。乳がんに特化した乳腺外科はまだなく、一般外科で乳がんの手術をするのが普通でした。ですから乳がんの患者さんは、術後の傷が怖くてまともに見られないとか、術後用の下着の存在を知らずにタオルを詰めることしかできないなど、不安があっても男性医師にはなかなか相談できないでいました。当時は外科に女医が少なかったこともあり、研修医の私が患者さんの身を切るような想いの聞き役になることが多く、その想いになんとか応えることができないかと、外科医になりました。

メディキュア:先生が研修医の頃に比べると、治療方法も随分変わったのではありませんか。

乳がんの治療をされている患者さんの相談にのるようになったことがきっかけです。

土井先生:さきほどお話しましたように、私が外科医になった頃の乳がん患者は年間2、3万人、それがいまでは、年間約9万人です。その原因は、日本人の食生活や体型の変化、また子どもを産む回数の減少など複合的な要因といわれています。
また、以前は乳がんで手術となると2か月は入院しないといけませんでした。抗がん剤も再発してからの投与でした。しかし、いまは短い方なら手術込で3泊4日ほどと入院期間が短くなっています。抗がん剤、放射線治療も通院しながら行います。ガンは普通に生活しながら治療するものになりました。

メディキュア:生活をしながら治療するようになったいま、治療中も下着は欠かせないものだと思いますが、乳がんの方に適した下着はどんなものですか。

ガンは普通に生活しながら治療するものになりました。

土井先生:患者さんの診察をしていて感じるのは、乳がんになる前となった後では下着の目的が変わっているのに、自分のケースにあった下着を選ぶことができていない患者さんが多いということです。乳がん治療中は、補正効果を重視したものでなく、放射線治療でできた水疱や、術後の傷口などに刺激をあたえないものを身に着けて欲しいと思いますし、患者さんに適切な情報を伝えるため、そして元気づけるため、ケアルームはとても大切な場所だと考えています。
(後編に続く)

土井卓子(どい たかこ)医師

横浜市立大学医学部卒業、横浜市立大学医学部付属病院で研修後、済生会横浜市南部病院、独立行政法人国立病院機構横浜医療センターなどを経て2009年よりかまくら乳がんセンターを立ち上げる。
医師として一貫して乳腺外科分野で経験を積み、女性の立場から女性のための乳がん治療及び乳腺分野での治療に従事。
湘南記念病院乳がんセンター長として、医師、看護師だけでなく、薬剤師、体験者コーディネーターやリンパ浮腫ケアスタッフを組み込んだ乳がん治療チームの組織、また形成外科と連携した乳房再建などの総合的な乳腺治療を目指す。
横浜市立大学医学部臨床教授、日本外科学会専門医、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医、乳腺専門医、マンモグラフィ読影認定医、ICD

湘南記念病院乳がんセンター
http://www.syonankinenhp.or.jp/nyugan

湘南記念病院乳がんセンター